八丈島通信③ ユニキャンで今もUEAとつながりの深い八丈島 ー ユニバーサルイベント協会理事 田口まりあ
2026年05月18日 コラム前回は島の日常の豊かさについて書きましたが、今回は昨年10月に通過した大きな台風のことと、島の人たちの『エンタメ力』についてお話ししようと思います。
2025年10月8日、50年に一度という規模の台風が八丈島を直撃しました。
台風には慣れている島の人たち、いつも通り家の養生をして、必要な避難をし、ひたすら通り過ぎるのを待った一晩。
翌日はそんな島の人たちも呆然とするような景色が広がっていました。
倒れた木々が道路をふさぎ、あちこちの家の屋根が飛び、いつもいっていたラーメン屋さんが骨組みだけになっていたり。
蛇口からは水が出なくなり、電気もWi-Fiも不通になりました。役場でも情報が不確かな中、電話番号を知っている友人と連絡を取り合い、お互いの安否を確認。どこの道路がふさがっているかなどもお互いに共有することができました。島は車ですぐに会いに行けることは大きかったと思います。
そんな中、みんなが情報を分け合い、誰かが指示をするわけでもなく、それぞれが自然に動き出して道路の復旧などがすごいスピードで進んだことにも島らしさを感じました。人的被害がなかったことは奇跡だと思いますが、今まで通りの生活ができなくなってしまった方々もたくさんいて単によかったね、では済まされない被災地の心の傷も体験しました。
11月に復活を予定していたユニバーサルキャンプも島での開催はなくなり、島のイベントもすべてキャンセルとなりました。
ただ、そこから半年が過ぎ、少しずつ復興が進む中であらためて感じたのは、それでもこの島には「楽しむこと」がとても自然に根づいているということです。
年明けから少しずつイベントも復活してきて、それは本当に島の活力だと感じます。
八丈島には昔から様々な踊りや唄が伝わっています。歴史的にも、日本各地の民謡や踊りが少しずつ混ざり合いながら今でも残っています。
ユニキャンでも紹介された伝統芸能のひとつに八丈太鼓があります。太鼓の両側から基本のリズムをたたき続ける『下拍子』と自由にアドリブでたたく『上拍子』が同時にたたくセッションのような感じです。昔は宴会の席には太鼓があったそうで今でもたくさんのグループが存在しています。上手い下手を気にせずまずは自分を開いて打っていい。という、型を気にしない自由な演奏はとても引き込まれます。
そして島で生活していて驚くのがイベントの多さ。神社のお祭りはもちろん、商工会が主催のお祭りは3日にわたって行われ、文化フェスという合同発表会のようなイベント、そのほかにも個人劇団の公演やコンサートなど、子供だけでなく幅広い年齢層が活躍していて、あそこで働いている○○さん、温泉で会う○○さん、がステージの上で輝きを放つ機会がたくさんあるのです。
ユニキャンの時にも感じていましたが、とにかくステージに立つのも、人のを見るのも好き。個人の『エンタメ力』がとても高いのです。
カラオケスナックもまだたくさんあって、そこで歌っている漁師のおじさんや静かそうな奥様の歌唱力がすごかったり、高校生のライブを島の大人たちが盛り上げ、お母さんも同じステージに立ったりする。
人のステージをしたり顔で批判したりする人はおらず、みんなで応援する。こうした光景を見ていると、この島では「上手にできること」よりも「やってみること」や「一緒に楽しむこと」が大切にされているのかもしれないと感じます。
自然の影響を大きく受ける場所でありながら、その中で人が集まり、音を出し、笑い合う。台風のような出来事があっても、またこうして日常の中に楽しみをつくっていく力があることに、静かな強さを感じました。
前回書いた「足るを知る豊かさ」は、こうしたところにもつながっているのかもしれません。
八丈島に来られたときは、景色だけでなく、こうした人のつくる空気にも少し触れていただけたら嬉しいです。

