ユニバーサルキャンプが変えた私 ー ユニバーサルイベント協会 顧問 松平輝夫
2026年08月08日 コラム ユニバーサルイベント協会で私が初めて接した言葉は、「夜空にさんさんと瞬く星の音を、あなたは聴くことができますか?」という問いかけでした。
正直、私は吃驚しました。
ユニバーサルイベントと初めて接したのはユニバーサルキャンプin八丈島でした。冒頭の問いかけは、その時同じ班にいた松森果林さんの著書『星の音が聴こえますか』の一節です。私は「星が降る音なんて、なんて素晴らしいんだろう。人は音を失っても、こんな音が聴こえるのか!」と感動しました。
ユニバーサルキャンプ初日、私たちのテントを張ってくれているのは車いすユーザーの人、聴覚・視覚障害の人たちでした。私はキャンプそのものが初めての体験だったので、テント張りのすばやさ、正確さに驚きの連続です。今日からの仲間だと思って胸を躍らせながら手伝おうにも手も足も出せず、只々見守ることしかできませんでした。
そうこうしているうちに夕食準備の時間になり、視覚障害の方がカレーを作るために玉ねぎをタンタンと刻んでいるのに、また吃驚。それまで料理は母や妻がやるものと決めつけていた私、ここでも私は何もできないという事実を思い知らされました。
初日の夜はダイバーシティ・バーが開かれ、さまざまな特性の人と飲みものを囲んで語り合います。ここでは「そのくらいならできるだろう」と、私が店長を名乗り出ました。
バーも終盤となり「そろそろ閉店かな? お酒も良く売れたし」と思った頃、手話通訳の3人のお嬢様方が、「これからお風呂にいくので、帰るまで取っておいてくださ~い」と飲みものを予約。私は即座に「大丈夫」と返事をしました。
しばらくしてそのお嬢様方が「あー喉がかわいた!」と戻られたものの確認したら飲みものが一本も残っていないではありませんか。冷や汗をかきながら「申し訳ないです。売り切れています」と言うと、お嬢様方から「あれだけ頼んでおいたのに!」と言われ、赤面して反省したのでした。
こりゃあとんだ失敗をしたと思いましたが、翌朝、3人とも「おはようございます」とにこやかな顔で挨拶されたのです。この企画に参加している人はみな良い人だなと感心しました。
またユニバーサルキャンプでは車いすサポートの練習中、道に段差があるのに前から突っ込んでしまい、乗っていた人が前に屈みこんで、もう少しで振り落としてしまうところだったという、危ない経験もしました。
ユニバーサルキャンプから帰ってしばらくたち、東京駅を歩いていると、白杖を持った視覚障害の方が歩いていました。もう少しでガラスにあたるところだったため肩を軽くたたいて「前にガラス面がありますよ」と知らせると喜ばれたので、了解を取って案内したところ、「ありがとう」と言われました。自分ながらユニバーサルキャンプの成果が表れたなと内心喜んだことを覚えています。
こうしたサポートの方法はもちろんですが、どのような思いで当事者に接するかといった心のもち方は、ユニバーサルキャンプの体験から学んだことです。こうしたユニバーサルキャンプの意義を、もっと皆に知ってもらいたいなと思います。
現在は、外国からのインバウンド観光客を媒介として、日本食、お辞儀・挨拶をはじめ、日本文化が世界中に広がり始めました。日本人の、相手の気持ちを大切にするという心が広がっています。日本文化の家元である私たちも、ユニバーサルイベントで学んだことを再度見つめ直さなくてはと、自分自身改めて反省しているところです。

