『ユニキャンの島』八丈移住通信② - ユニバーサルイベント協会 理事 明神まりあ
2023年07月08日 コラムユニバーサルキャンプで今もUEAとつながりの深い八丈島。
前回はユニキャンの思い出と五感を刺激する島の空気のお話をしましたが、今回は八丈島の日常をご紹介します。
ユニキャンがご縁で知り合い再婚したシニアカップルで八丈島に拠点を移してから早くも2年が経ちました。
八丈島は羽田空港から飛行機で50分(実際の飛行時間は30分程度)伊豆七島の一番南で東京都です。空港に降り立つともわっとした湿気と様々な植物の香りが混じった亜熱帯の空気に迎えられます。
島での毎日は一言でいうと『足るを知る豊かさ』だなと思っています。
まず私が個人的にとても大切に思っている八丈島の大きな特徴は『大手チェーン店がないこと』です。コンビニもありません。日本はもちろん世界どこに行ってもコンビニ、大手ハンバーガーやコーヒーのチェーン店が見られるこの時代に夜に輝くあの看板たちが一つもないことが実は大きな財産だなと思っています。(あくまで個人の見解です)
1日3便の飛行機、1便の船も天候によっては欠航となり、台風がくると数日物資が止まるのでスーパーからは牛乳やパンなどが一気になくなります。町並みは素朴で、潮風や湿気で傷みやすいからか、住宅も車も中古を直して使っている人が多いです。私たちも50年ほど前に社宅として建てられた家にご縁があって住んでいます。革製品はすぐにかびてしまうのでバッグや靴はもちろんベルトも使わなくなりました。
物価は少し高いけれど、釣れたお魚や畑でとれた野菜を友人が届けてくれたり、山に明日葉やキイチゴを取りに行ったり、誰かの家に集まって終電を気にせず語り合ったり。人や場所との距離が近い島の生活の中では、流行りのスイーツや行列のできるお店やブランドものが手に入らなくてもあまり気になりません。
チェーン店がないため島のお店は個人経営が多く、昔懐かしい古い商店もまだ点在しています。居酒屋さんやカフェなどの飲食店はそれぞれ特徴があって工夫やセンスが発揮されています。おしゃれなお店や宿、様々なレッスンやトレーナーも増えたくさんの人が感性やアイディア、経験値を活かして活躍されています。
そしてこの『ちょっと不便』を安心して楽しめるのは、この島の大きさ、都心までのアクセスの良さ、ITと運送と通販の進化によるところが大きい。私がユニキャンに通い始めた十数年前と比べてもWi-Fi環境は良くなり、ATMが少ない分キャッシュレス化も進んでいて若い移住者や里帰りの人たちも増えているように感じます。
その昔は流人の島だった遠い離島が今では田舎と都会の絶妙なバランスを保つ、個人が活躍しやすい場所になっている。それは『障害は環境が作るもの』というUEAの理念や、たくさんの友人が身体的にはいろいろな不便を持ちながら個人の感性と工夫と技術で活躍していることと相通ずるところがあるなと思うのです。
飾る必要がない毎日の中で、朝陽が昇る海と夕陽がしずむ海がどちらも車で10分の場所にあり、夏は海に入って冬はクジラを探す。仕事終わりには温泉に入る。夜はお店も早く締まって真っ暗になり、静寂が訪れる。無いものを思うより、そこにあるものを楽しむ『足るを知る』生活の中でシニアなカップルも少し優しくなれたように思います。
八丈島に来られるときはその素朴さ、ちょっとした不便さもぜひ楽しみにいらしてください。