「CODAあいのうた」がアカデミー賞3冠受賞!による気づき ー 常務理事・事務局長 守屋和彦
2022年04月06日 コラム皆さんは先日行われたアカデミー賞の授賞式をご覧になりましたでしょうか?
日本では有料衛星チャンネルでしか放映されなかったため、ライブで見ることができなかった人が多かったと思います。 私も見られませんでしたがYouTubeで受賞シーンやスピーチを見ることができました。
特に興味があったのは、前回の「耳の日」にちなんだコラムでも理事の飯塚が少し触れましたが、前評判が良かった「CODAあいのうた」が作品賞、脚色賞、そしてお父さん役のトロイ・コッツァーさんが助演男優賞に、3つの部門でノミネートされていたことでした。 オスカーを手にできるかが見どころでしたが、見事に作品賞と脚色賞、そして助演男優賞にトロイ・コッツァーさんが受賞し、すべてのノミネートされた部門でオスカーを手にすることができました。
聾の俳優さんがアカデミー賞受賞したのは史上2人目で、一人目が同映画のお母さん役のマーリー・マトリンさんが1986年に主演女優賞を受賞し、聾の男性俳優としてはトロイ・コッツァーさんが史上初めてになります。
と、長いですがここまでが前置きです💦
ここで私が話したいのは助演男優賞を受賞したトロイ・コッツァーさんの受賞シーンとスピーチで気づいたことです。もちろん私はYouTubeで見たのですが、プレゼンターで韓国人俳優のユン・ヨジョンさんが受賞者の名前が書かれた紙を開くと、手話で「Congratulations!」と表現し、彼の名前を口頭で呼びました。その後、トロイさんは舞台に上がり手話でスピーチをしたのです。
このスピーチの中で気づいたことが3つありました。
- プレゼンターのユン・ヨジョンさんは手渡したオスカー像を、トロイさんが両手で手話ができるように、そっと受け取るという気配りをしていました。
- トロイさんの手話のスピーチに通訳が入っていたのですが、トロイさんがお父さんへの感謝の話をし始め、「とても素晴らしいSigner (サイナー:手話を使う人)でした。しかし、事故で首から下が不随となってしまい手話はできなくなってしまったが、色々なことを学んだことを感謝する」と話されました。そのときに通訳の方の声が震えて、今にも泣きだしそうな感じで通訳をしていました。最後には鼻をすする音も入っていましたね。通訳者も感動させるくらいトロイさんのスピーチはパワフルでした。
- そして、助演男優賞受賞のトロイさんの名前が呼ばれたとき、会場にいたノミネートされた俳優たちとその家族、また有名人の殆どがスタンディングオベーションで両手を振り「手話の拍手」を自然にしていました。 これにはとても驚かされました。もし、日本で同じようなことがあった時、どれくらいの人たちが手話の拍手を自然にしていたのかということを考えさせられました。皆さんは手話の拍手をご存じでしたか?
参考動画
アメリカメディアでのアクセシビリティトピックについて
トロイさんをインタビューしているアメリカのエンターテイメント系のニュースをYouTubeで見てみると、Disability (ディサビリティー:障がい)を持っている人たちへの配慮について話されているのを多く見受けられました。 映画館のアクセシビリティや、スタジオのアクセシビリティなど、トロイさんを含めてこの映画がアカデミー賞を受賞したことで、アメリカでは再度アクセシビリティについての認識を確認する機会が出てきたように思えます。
参考動画
(9:10くらいから)
アカデミー賞のビデオをみた皆さんはどんなことを気づきましたか?
「色々な意味」で記憶に残るアカデミー賞だったと思います。
最後に、日本でもアカデミー賞を受賞した「CODAあいのうた」を観る人や機会が増えると思いますので、「アクセシビリティ」や「ダイバーシティ& インクルージョン」は何かを 改めて話すことが増えるといいなぁと思います。
おまけ
この映画の予告編で主人公のルビーが車に乗って窓からカメラ目線で後ろを見るシーンがあります。
その時に右手で「I love you」に似た手話をするのですが、「I love you」とはちょっと違います。 中指を人差し指に絡ませているのです。
(このサムネと、00:3のところ)
何かな?と思いよく調べてみると「I really love you」の手話だったのです! これまた新しい気づきをもらいました!
追記
この映画「CODAあいのうた」はフランス映画の「エール!」(邦題)、「La Famille Bélier(原題:ベリエ家)」が原作となり、ハリウッド映画としてリメイクされました。
ぜひこちらも見比べてみてはいかがでしょうか。
守屋和彦